第4章 人を動かす(アサイン・外注・育成)
ピーク時300人。
その人たちは、
どこから来るのか。
この章の、経営の問い
人が足りているか。
遊んでいないか。
場面1 1年目の終わり、体制会議
真壁
要件定義は50人で回せました。でも来年の春からは一気に220人、再来年は300人が必要です。
早瀬
社内から300人を集めたら、ほかのお客様の案件が止まってしまう。協力会社さんとの約束は、受注前に取り付けてあるね?
真壁
はい。三社から、ピーク時に合わせて130人ほど来てもらう約束です。
人数の推移
人は一度に集まり、
一度に去っていく。
プロジェクトの人数は一定ではありません。設計と製造の時期に山ができ、本番稼働が近づくと減っていきます。
1〜5年目の合計で約12,500人月。6年目以降は保守の別契約(第7章)。
ピーク時の約300人の内訳は、蒼樹の社員が約170人、協力会社の人が約130人。5年間を通すと、社員が約7,000人月、協力会社が約5,500人月を担います。第1章の原価の内訳(社員の人件費 約90億円、外注費 約60億円)は、この人数から計算されたものです。
- 社員 約7,000人月
- 約90億円
- 1人月あたりの原価
- 約130万円
- 協力会社 約5,500人月
- 約60億円
- 1人月あたりの外注費
- 約110万円
ここで出てきたことば(押すと開きます)
- アサイン
- 社員を案件に割り当てること。「この案件にアサインされた」のように使います。
- 社員1人月あたりの原価
- 給料だけでなく、賞与、会社が負担する社会保険料なども含めた、1人が1か月働くのにかかる費用です。
人の集め方
三つの入口から、
チームをつくる。
社員のアサイン
毎月のアサイン会議で、どの社員をどの案件に就けるかを決めます。経験のある人ほど引っ張りだこで、ほかの案件との取り合いになります。
協力会社の受け入れ
足りない人数は、協力会社と準委任の契約を結んで来てもらいます。ここで大切な決まりが一つあります。協力会社の人に、蒼樹の社員が直接「これをやって」と指示を出してはいけません。指示は協力会社側の責任者を通します。直接指示を続けると、実態が人材派遣と同じだとみなされ、法律違反(いわゆる偽装請負)になるおそれがあるためです。
若手の育成
若手を入れると、平均の生産性は一時的に下がります。それでも、5年続く大型案件は人を育てる絶好の場です。蒼樹は、全体の1割ほどを育成枠として若手に任せることにしました。
場面2 4年目の秋、本番稼働の半年前
小野寺
来年の春には、290人から180人に減りますよね。抜ける110人の社員の方は、次の行き先が決まっているんでしょうか。
真壁
そこが一番の悩みです。次の案件が決まらないまま待機になる人が出ると、その間の給料はどの案件の原価にもなりません。
小野寺
仮に社員50人が2か月待機すると、50人 × 2か月 × 約130万円で、約1.3億円。それがそのまま会社の利益から消えるわけですね。
あなたが人の配置を決める立場なら?
本番稼働のあと、
大勢がプロジェクトを抜けます。
どう備えますか。
いちばん待機が長くなりやすい方法です。大型案件の人数はすぐには吸収できず、数か月の待機が会社全体の利益を押し下げます。
理にかなった一手で、実際によく使われます。ただ、協力会社の契約は解約の予告期間が決まっていることが多く、急には減らせません。頼りすぎると、次に人が必要なときに来てもらえなくなります。
真壁と早瀬が選んだ答えです。営業は半年前から、抜ける人の経験が活きる次の案件を探しはじめ、一部は保守チームに残ってもらう計画を立てました。
蒼樹の答え:C(Bも組み合わせる)
協力会社とは予告期間に合わせて段階的に契約を終え、社員は次の案件と保守チームに振り分けました。人の出口を早めに考えることが、プロジェクトの最後の仕事の一つです。
小野寺の経理メモ
社員の給料は、案件があってもなくても毎月出ていく費用です。一方、外注費は契約の人数に応じて増減します。協力会社は、人数の山と谷を調整する役割も担っています。
案件に就いていない社員の人件費は、会社によって売上原価の中で「未稼働」として扱ったり、販売費及び一般管理費に入れたりと処理が分かれます。どちらにしても、どの案件の利益にもならない点は同じです。だから経営は、稼働率を毎月気にしています。
この章のポイント
- 大型案件の人数には山と谷がある。ピーク時は協力会社の力が欠かせない。
- 協力会社の人への指示は、協力会社の責任者を通す。直接指示は偽装請負のおそれがある。
- 人が抜けるときの行き先を早めに決めないと、待機の人件費が利益を削る。